展示会詳細
朧型の紅型衣裳/朱漆の漆器
会期:2021-11-26(金) ~ 2021-12-26(日)
特別展示室では、毎月「国宝 琉球国王尚家関係資料」の美術工芸資料および文書資料をとおして、琉球国王尚家の歴史と、王国時代の遺物をご紹介しています。
12月の美術工芸資料は、染織資料は尚家資料から『朧型(おぼろがた)の紅型衣裳』をご紹介します。
今回ご紹介している紅型衣裳は、すべて表地に「朧型(おぼろがた)」という技法が使われています。紅型は、通常は1枚の型紙を使用して染めますが、朧型では型紙を2枚使います。通常の文様を染める型紙に、地紋(じもん)の細かい柄を染める型紙を加えることで、複雑で奥行きのある文様を表現することができます。この朧型は、手間が通常の倍以上かかり、技術的にも難しいため、現在では作る人はごくわずかです。
また調度品は11月に引き続き、『朱漆の漆器』と題して尚家資料と神山(かみやま)家資料、門岡(かどおか)家資料から、王国時代に製作された琉球漆器をご紹介します。
琉球での漆器製作は、15世紀には技術が確立され、16~17世紀に螺鈿(らでん※注1)・箔絵(はくえ※注2)・沈金(ちんきん※注3)技法が発達しました。また、18世紀には高温多湿の気候を生かして独自の堆錦(ついきん※注4)技法が考案され、発達しました。
漆器の中でも、朱漆に沈金で精緻な模様を隙間なく埋め尽くしたものは、王家や上級士族が用いた、格式の高いものとされています。
※注1:螺鈿=薄く研(と)いだ貝殻片を漆面に張り付けて文様をあらわす技法。
※注2:箔絵=漆面に漆で文様を描き、金箔を貼り付けて文様を表す技法。
※注3:沈金=漆面に金具で文様を彫り、金箔や金粉をすり込んで文様を表す技法。
※注4:堆錦=着色した漆をこねて作った堆錦モチを文様の形に成形し、漆面に貼り付けて立体的に文様を表す技法。
文書資料も、11月に引き続き尚家文書から『僉議(せんぎ)』『異国船の来航』と題し、王国時代末期に琉球に到来した欧米諸国の異国船に対する王府の対応を記録した文書をご紹介します。
19世紀になると欧米各国の船がアジア地域へ通商・交易・布教を目的にやってくるようになります。琉球にも、フランスやイギリスの宣教師が滞在するようになります。中でもイギリス人のベッテルハイムは8年の長期に渡って滞在しましたが、常に王府の厳しい監視下におかれ、思うように布教は出来ませんでした。
また、日本に行く前に琉球に滞在したペリー艦隊の水夫ウイリアム・ボードは琉球人への暴行事件をきっかけに殺害され、その後、国際問題へと発展しました。
今回展示している「伯徳令聖書琉訳一件 異国日記」は、王府がベッテルハイムの布教活動を監視している様子を記録した文書です。当時の王府が、異国船と異国人にどのように対応していたかを伺い知ることが出来ます。
王国時代の貴重な記録と、精緻な美術工芸品をどうぞご覧ください。
美術工芸資料 | ・桃色地山水楼閣鶴文様紅型木綿袷衣裳 (ももいろじさんすいろうかくつるもんようびんがたもめんあわせいしょう) 【国宝尚家資料】 ・空色地貝藻梅紅葉松葉木目文様紅型木綿袷衣裳 (そらいろじかいもうめもみじまつばもくめもんようびんがたもめんあわせいしょう) 【国宝尚家資料】 ・紫地桜紅葉蝶流水青海波文様紅型木綿袷衣裳 (むらさきじさくらもみじちょうりゅうすいせいがいはもんようびんがたもめんあわせいしょう) 【国宝尚家資料】 ・朱漆牡丹唐草七宝繋沈金料紙箱 (しゅうるしぼたんからくさしっぽうつなぎちんきんりょうしばこ) 【国宝尚家資料】 ・朱漆巴紋牡丹唐草文沈金櫛箱 (しゅうるしともえもんぼたんからくさもんちんきんくしばこ) 【神山家資料】 ・朱漆巴紋牡丹唐草文沈金文箱 (しゅうるしともえもんぼたんからくさもんちんきんふばこ) 【神山家資料】 ・朱漆葡萄文箔絵椀(しゅうるしぶどうもんはくえわん) 【門岡家資料】 ・朱漆龍牡丹七宝繋文沈金椀 (しゅうるしりゅうぼたんしっぽうつなぎもんちんきんわん) 【門岡家資料】 ・色絵紅葉文風炉(いろえもみじもんふろ) 【国宝尚家資料】 ・玉冠(ぎょくかん)[レプリカ] |
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文書資料 | ・御包丁人江新家譜被下候僉議抜(1762~1857年) ・御所帯御難渋付向御取縮被仰付候僉議 ・咸豊二年六月より同六年三月迄僉議(1852~1856年) ・伯徳令聖書琉訳一件 異国日記(1852年) ・米国水兵溺死一件 異国日記(1854年) 【以上はすべて国宝尚家資料】 |