展示会詳細
近代沖縄の染織~貢納布から特産品へ~
会期:2022-10-28(金) ~ 2022-12-26(月)
王国時代に長い時間をかけて発達し、技術が確立した琉球の染織は、近代になると沖縄県の特産品として位置づけられ、近代化・産業化がすすめられました。
家内工業だった織物作りは工場での集約産業へと変化し、それに伴い織機は地機からより生産性の高い高機へ置き換わっていき、さらに手織りから機械織りへと移行していきました。
県外への移出向けに作られる織物は、他県の産地で好まれている図柄が取り入れられ、それが、次第に沖縄の人々の着る衣裳にも使われるようになりました。
また、工業化による大量生産により、安価な布地が簡単に手に入るようになると、人々の衣裳の素材は家庭内で造られた手織りの布から市場で購入したものになっていき、衣裳の形も変化しました。
一方で、生産量の増加とともに機織りの粗製乱造が問題となったことから、県は工業指導所を設置して品質保持と
生産体制の指導にあたり、新しい製造法の研究と普及に努めました。
さらに、県内各地には、織物の作り手の要請のための実業学校が設置されました。教育の場では風俗改良運動が起き、女学生たちの服装は伝統的な琉球の衣裳から和服、さらには洋服へと変わっていくことになりました。
世界的な不況で織物販売が不振になると、県は観光振興に乗り出し、その中で染織は沖縄を象徴的にあらわすものとなっていきました。
一方では、産業化の波に乗れなかった紅型は衰退の道をたどりましたが、美術品として県外の収集家や画家の注目を集めるようになりました。
これらの明治期から戦前期までの間に沖縄の染織に起きた変化を、産業、教育、観光の3つのテーマを軸に、大正から昭和初期に製作された染織品、戦前の工芸学校や工業指導所の記録や観光案内パンフレットなどの資料をもとにひも解いていきます。