鳥文様の紅型衣裳/美御前御揃
特別展示室では、毎月「国宝 琉球国王尚家関係資料」の美術工芸資料および文書資料をとおして、琉球国王尚家の歴史と王国時代の遺物をご紹介しています。
今月は鳥文様の紅型衣裳/美御前御揃をご紹介します。
鳳凰、尾長鳥、鶴、燕などの鳥の文様は富貴や長寿を意味し、王家の紅型に多くみられるモチーフの一つです。今回展示している衣裳には、尾長鳥と燕が描かれています。
尾長鳥は「明けの鳥」とも呼ばれ、夜明けに鳴き声で一日の始まりを告げる高貴な鳥とされています。燕は南から渡って来て春の訪れを告げ、番(つがい)でひな鳥を育てることから、子宝や夫婦円満の象徴ともされています。
いずれも縁起の良い吉祥文(きっしょうもん)として古くから親しまれている鳥で、色とりどりの鳥たちが衣裳の中を飛び交う様子が生き生きと描かれています。
調度品は、「美御前御揃(ヌーメーウスリー)」をご紹介します。
美御前御揃とは、琉球国王と王族が、首里城のプライベートな生活の場にあたる御内原(ウーチバラ)で、正月や祝日などの祝宴に用いたとされる、琉球の特徴的な道具揃の事です。
中央に金・銀器、右に御籠飯(ウクファン)、左に御玉貫(ウタマヌチ)を配し、それぞれを高い脚付盆(あしつきぼん)に据えます。中央の金杯は国王だけが使用しました。当館では記録に基づき尚家伝来の器物を組み合わせ、往時の「美御前御揃」を再現しています。
これらの器物は、意匠や技法が微妙に異なることから、同時期に製作されたものではないと見られ、補充などを経て現在の形になったと考えられます。
文書は、第17代尚灝王の婦人であり、第18代尚育王の実母にあたる具志堅按司加那志と、太子尚典の御守役に抜擢された百名朝起に関係する資料を紹介します。
王国時代の貴重な記録と、精緻な美術工芸品をぜひご覧ください。